Meet in Beijing  
〜中国大陸7,000km 果てしない夢を乗せて〜



KUNMING
北京から3時間弱。
およそ石垣島くらいの緯度にあるのが春城と呼ばれる中国の奥座敷。昆明である。

空港に降り立った瞬間それとわかる南国性の気候。
突き刺すような暑さの中にも標高の高さからか汗をかくという感じはない。
ミャンマー、ベトナムの方が北京政府よりも近いせいか?町並みには東南アジアの匂いがプンプンする。
ホテルの前に立つ象の置物が余計にアジアンな雰囲気をかもし出す。

ここでも徹底した現場主義でスケジュールが進行する。
だいたい今飛んできたこの飛行機の便名すら、空港でようやくわかったくらいだ。
ま、そういうことを気にするのはこの際止めておこう。

そして異国のルールに追加される。
「中国語に謙遜語はありえない」

自分の気持ちの押し売りはこの国では通じない。
人のためにやって自分が裏切られてもだれも助けてくれない。
まずは「自分」をきっちりすることなのだ。
だから欲しいもの、必要なものはもらえるまで主張しつづける。
海外で生きて行くにはこれは実はとっても必須なことだったりする。
日本という国はなんてやさしいのだろう、と思うことしきり。
しかし、ある意味、忘れていた厳しさ、感情をおそわった気がする。

そう、そういえるほど、ここ昆明でのスタンバイは過酷であった。
でも、それが後々の血となり肉となる。

YES,NOの本当の意味を知らず、まわりとの融和にこだわる僕らの国民性とはどこか違うのだ。
相手の意を汲んで。という言葉はなく、きっちり主張する事が大事な国。
でも、それってとてもわかりやすい。
人間の原点ではないの?などと感じたりもした。

会場入りする。世界博覧会会場内にツアーバスは入ってゆく。
昆明の会場は3000人は収容できるであろうという野外劇場。

こんなところに人が満員になるのか?
とちょっと気になったりもした。

アンプは届くのだろうか?

ドラムセットは大丈夫だろうか?

電源の確保は?

胃痛になりそうなこの疑問もつじつまあわせのように20時のスタートには解消した。
そして、満員のスタジアム。

3000人収容の大劇場が満員!


まだまだ、わからない。
この国はどこまで奥が広いのか?
どこにいたのだろう、そしてどこに帰ってゆくのだろう?

明日はどうなるのかまったくわからないが、別に明日のことがわかることは重要ではない。
今どうするか?ということに懸命に生きたい。
と、思い始めてきた。

夜はマジックショウ。
なぜ?と思ったこれ納得。終了後全員ステージに挙げられて地元の人たちと記念撮影。
僕らが中国の芸能が珍しいと思うのと同じように、ここでは僕ら自体が珍しいのだ。
パンダになった僕ら。

しのん
   「すべてのパフォーマンスが終了して、全出演者がステージ上に上ると、嵐のような写真撮影、握手やサイン
   攻めにあいました。何と熱い人たち!"I love Japanese!" と叫んで握手を求めてくる女の子、"ピャオリャン!
   ピャオリャン!(きれい、きれい!)" と騒いでサインを求めてくる女の子達。男の子二人組が、交互に
   私と写真をとったのだけれど、シャッターを押す手が震えていたのを私は見逃さなかった。そんな緊張しないで!」

  
そうして、昆明での二日間のステージを終える。
現地スタッフに言われたアドバイスがこころに響く。
それは強烈であり正しかった。
「メンバー紹介はちゃんとしたほうがいい」「バックメンバーはもっと派手に動いたほうがよい」
「MCの中国語はもっと大げさに」
こんな言いづらい事を的確にストレートに言ってくる。

どれもこれも僕らの課題であったりして完成しないまま訪中した自分にうしろめたくなる。
わかっているよ、そんなことは。

彼らはきっちり思ったことの言える強い民族。
もしかしたら日本以外の国はすべてそうかもね。

昆明を離れる日、僕らに厳しく意見を言ってくれたスタッフも空港の最後の所まで名残惜しそうに見送ってくれた。
本当に素晴らしいスタッフだった。心から感謝している。
仕事だけでは無い「なにか」を感じさせられた。
なんだかジーンときた。
もう二度と会わないかもしれない彼ら。
「チョンゴア ヘン ダー」中国は広い。でもまた会えることなら会いたい。
そのために何かをするのなら僕は全力を投じて望みたい。




NANJING
昆明から南京までの道のりは長い。
上海空港に降り立ち、排気ガスと喧騒の街を後にバスは走る。
およそ5時間のバスの旅。
中国、オーストラリア、ドイツ、アメリカそして日本。
会話はボディランゲージ中心。同じ国民が語るよりもうるさい。
自己アピールができなければいけない空間。バンドを乗せたバスは走る。
まだ見ぬ次の公演地。南京を目指して。


簡単にツアーメンバーを紹介しよう。
ドイツ人グループのsweet liesは踊りながら歌う5人組。
FOXI Records社長のジークフリートと20cmはあるとおもわれるユニークなひげが自慢のヘルムートジーベン。
とりわけヘリーはフレンドリーで楽しい。
メンバー構成は18歳から30歳まで。21歳のヨビータは明るくすぐに打ち解けた。ダンスも最高にうまい。
まさにドイツ人といった顔立ちのジルもキュートでかわいい23歳。
子供っぽさが残る。
スーは大人っぽくとても礼儀正しいリーダー格の淑女。
ミアはいつも歌を口ずさんでいる歌姫だ。
一番若いリンは若さ溢れる、といった感じのちょっと控えめな子。

スペイン系アメリカ人モニカEゴメスはとてもハートフルな歌を歌う。49歳の年齢を感じさせないその魅力は
数多くの経験が物語っている。テキサス州エルパソに住んでいる彼女。
西部劇の町。ジョンウエインは近所に住んでいたのかなぁ。
一度は訪れてみたいと思う。

オーストラリア人デエモンデービスは37歳。彼もまたプロフェッショナルでみんなを楽しませることを欠かさない。
ギリギリのジョークも決して度を越えない。これも経験から来るのだろう。

    
愉快なデエモン           陽気なヘリー               能天気なGQ

そして中国対外演出公司の李志祥(卓球名人)。彼は英語がわからないため、まったくコミュニケーションが取れなかった。
だけど僕らが中国語で話し始めると彼も英語で答えるようになってきた。(なんだ、英語はなせるじゃん)
今ではすっかり仲間。ミスターリー、楽しい男。
また、中国にきたなら、是非一緒に飲みたい男。そして卓球の借りはかならず返すよ。

もう一人、23歳の通訳兼スタッフのチューヤン。彼女はとても物覚えがよい。
メンバーが教えるどうでもいい日本語をマスターし、今では「おーい、チューヤン」と大の男がみんな彼女に頼ってる。

      
デエモンとモニカ           才女チューヤン              MrLeeも明るい

こういったメンバー。贔屓目もあるが僕にとって最高のツアーメンバーだ。

南京に入り大きな門を越える。街中はなんともいえない。
歴史の香りが漂う、中国的な町だ。
中国的というのは自分が今まで思っていた中国のイメージのこと。
混沌と活気に溢れる環境を感じさせられる。
そして僕らのバスは南京で最大といわれる、五台山体育館に向かう。

今回は南京電視台のオンエアもある大きな企画。
会場についてさらにその大きさを実感することになる。
収容人数は8,000人、会場にはPA、照明ともセッティング済、おまけにドラムセットまで組まれていた。
今回、今まですべて自分たちでやる羽目になっていただけにこれはうれしい。
謙虚になっている自分がわかる。
というよりも自分のことは自分でやるということが身にしみていたかもしれない。

メンバーも主張が強くなってきた。
「ヤーマイク!」マイクがないと届くまでスタッフに言いつづける。
スタッフからちょっと待って、と言われるくらいに主張できるようになってきた。
よし、Goodだ。

音響の注文も中国語と英語を交え伝達する。
会話というほどのものではないが、気持ちを伝えることができるようになってきた。

楽屋ではダエモンと打ち解けジョークを言いあえるようになった。
モニカも加わり即席のセッションが始まる。
モニカのすばらしい歌声は、聞けたこと自体が宝物。
世界にはすばらしい音楽とアーチストがいる。肌で感じる瞬間だ。

スタジアムでの本番が始まる。
360度埋め尽くされた観客席に昆明でアドバイスをもらったことをやってみる。
すごい!うけた!

昆明で「メンバー紹介をもっと派手に」といわれた事を実践してみたのだ。
メンバー全員が中国語に挑戦。歌も歌う悪乗りよう。
でも、ものすごい拍手にホント!嬉しくなる。
また、南京ではじめて楽曲をオール中国語で望んでみた。
「花心」は日本語と半分だがその他の曲、MCともに中国語だ。
それも気にならない。
発音のうまい下手なんてどうでもよいのだ、音楽を伝える手段にすぎない。
ようやくここにきて「やりたい事」を実践できた。嬉しい!

大事なのは伝えたいという心。
僕らはもうそれだけに集中している。
日本ではあざといこともここでは常識になる。
逆に自分の価値観で相手の気持ちを勝手に作ってはいけないということだ。
自分の価値観自体があざといのかもしれない。

ステージはMCの効果もあり、盛況のうちに終える。
多分今回のツアー中もっとも盛り上がっただろう。
拍手の嵐はやまない。
南京電視台のオンエアもあるようだ。
セットもスモークやフラッシュなど効果も多い。演出も効果的だった。

      
エンディングは楽しい            SWEET LIES!     体育館の360度に広がる客席

しのん
   「360度のスタジアムいっぱいのオーディエンスに、『今、私は中国語を勉強しています。なぜなら中国が、
    中国人が好きだからです!』と呼びかけました。湧き上がる歓声。8,000人の聴衆の心をつかんだ瞬間。
    メンバーも全員一言ずつ中国語を話したので、会場は大盛況。受け入れて欲しければ、こちらから一歩
    踏み込んで、好意を伝えること。それは人種を超えた人と人とのコミュニケーションの基本だもんね。」



ビートルズが35年前日本武道館で公演したときの気持ちはきっとこの延長線上にあるのだろう。
もっとも、僕らは超無名。
比べるすべも無いが、初めての人ばかりだがそれでも心をつかむことができた。

夜はパーティ。
移動してリハをやってショウが始まる。
終わって打ち上げてまた次の公演地に向かう。
まさにGYPSY。

体もきついが今はその不思議な感触に身を任せている。いつのころからか、夢を見ていた生活。
スクリーンの中のあのロックスターの暮らしを見るような今。

ツアーも半ばに来るとメンバー間でもすれ違いがある。
人間だれしも欠点はあるもの。見え隠れする普段と違い、ずっと一緒に
いるわけだからいいところも悪いところも丸裸にされる。
気楽なメンバーを見るとイライラするときもあるが今はこの過酷な状況に感情の起伏も淘汰される。
感情をぶつけるのはステージで手いっぱいなのだ。「団結するには外に敵を作れ」とよくいったものだ。

南京の人とのふれあい。
ここの人はとにかく明るい、あたたかい。田舎でもないし北京のようにビジネスライクでもない。
良き昔といったら失礼だろうか?
でも、敬意を表していいたい。良き昔が香る街と。


夜、月がとてもきれいだった。
月明かりで日記が書けるほど。そう、つきのうさぎもくっきりと。

翌朝も早い、南京の街は活気に溢れている。
ちょっと想像のできないくらいの自転車の波。
自転車の合間を縫うようにすいすいと駆け抜ける車。
この国の安全基準は「道路は危険」ということだろう。みんなが気をつけて走る。だから事故も少ない。
「待つ」文化をもつ日本人とは正反対のような気がした。

きれいな整然とした南京空港に着き大連へのフライトを待つ。
楽器類が預けられず、すべて機内持込となった???
「そんなんでいいんですか?」
と思ったが、言われるとおり持ち込む。

国内線だったためそう、混んでもなかった。
ま、空いているから問題もないのだろう。
MY BASS(Tune)はしっかりと座席3席を占有してフライトを待つ。
いよいよ大連に向かう。
このツアーも半分を折り返した。





Beijing(北京)編
Kunming(昆明)〜nanjing(南京)編
Dalian(大連)〜Shenyan(審陽)編
Tenjin(天津)〜Beijing(北京)編


 
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GYPSY QUEEN の北京語の楽曲です。現在5曲です。