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やることだらけの毎日。急に決まった分だけに全てがぎりぎりの工程になる。
準備なんてそんな事は日々やっていればと思うがダイエットのようにそう毎日毎日できていない。
それは自分に責任があるのだが全てに保険をかけて生きているわけではない。
次々にでるプロモート案。
それはただ、音楽をやってきたというスルーな感覚ではなく、僕らは中国で音楽を伝えるのだ。
というストックの意識であった。
プランニングは多岐に渡り雪ダルマ式に作業が膨れ上がる。
上海でTシャツを配ろう!
そうだ!それは名案だ!じゃあ、作ろう!素材のTシャツを買って、Tシャツに印刷する要素をPCで作成する。
Tシャツに印刷する素材を買いに行って、PCでプリントアウトしたものを転写する。
その作業足るものは莫大な工数であった。
結局このTシャツ構想は挫折し、無地Tシャツが中国を旅することになる。
また、お客さんに僕等を紹介するためにポストカードを作ろう!
それも名案だ。作ろう!まずデザインを作ろう、それを打出してチェックして、印刷に持っていこう!
プリンターのほうが良い?時間がかかって中国行きに間に合わない。印刷も高い。
それならデータ印刷は?どこでやっているだろうか?探しに行かなきゃ。
自己紹介のときに名刺があればいい!そうだ!。。。
そうしてとてつもない作業が急きょの訪中のため繰り返された。
胃が痛い。間に合わない。
でもなきゃ後悔するって前回言っていたじゃないか。
「あー今度行く機会があればこうしよう!」そう話していた。
口だけになるのは大嫌いだ。だったらやるしかないのだ。でも、時間がない。
肝心要の音楽のリハもまだできていない。
100%はありえないが自分の中では30%も満足が行かない。
そんな状況が続いた。中国に行く前には必ずそうだ。
2回中2回とも同じ結果であれば、「毎回」といっても良い。。
「うさぎとカメ」ではのんびりうさぎが好きだったボクは中国遠征を目前に完全なるウサギ体質になっていた。
うさぎだったら、広州にいったら食べられちゃう。
食べられちゃう前にたどりつくかが問題だ。
とりわけ最後の一週間は僕としのんにとってまさにウサギ地獄だった。
納期と山積の作業と調整と中国語を覚えなければいけないプレッシャでとうとうしのんは倒れてしまった。
これはやばい。前回の経験があるだけにスタートから準備不足による不完全燃焼では思いやられる。
そして、メンバーの心配の中、しのんは出発前の一週間のうちほとんど病床に。
大変さはメンバー皆同じ。
でも、ボーカルしのんの場合は当るスポットの量が違う。
それだけ同じ大変さにも重さにも違いがあったのだろう。
プレッシャーがのしかかる。「行きたいって言わなきゃ良かった?」そんな事も脳裏をかすめる。
きっとすべて周りのスタッフがやってくれるようなスーパーメジャーな環境なら良いのだろう。
「いい歌を歌って下さいね」と言ってくれ、全ては暗黙のうちに揃っている。
そうありたい。でもそうはなれない。
そうなるように今は頑張らなければいけない。
そんなことはもっと先だ。今はそんな事を言ったら相手にされない。
僕等は「セルフサービス」でこの舞台に上れることになった。
だから、この苦労も全て含めて「GYPSY QUEEN」なのだ。
リハーサルはぎりぎりに行われた。
中国でも流行っていた「花心」に加えもう一つ中国語の曲を増やそうとした。
これもアレンジは一からしなければいけない。
中国風メロディ。どうやっても本場の中国陣歌手のものと比べて聞きおとりがする。
うーむ。難しい。
そこで、開き直ってみた。GYPSYにはGYPSYしかできない。
自分たちの得意とするパターンで作り変えちゃおう!
メンバーにはあらかじめ原曲を渡さずコードだけを渡した。
そこから「新曲」のように一から作り出したのだ。
結果、かなり大胆なアレンジとなった。ウケるだろうか?
いや、もう、そう言う事は考えずにとにかくやってみよう。と思った。
また、今回コーラスとして由美ちゃんに参加をしてもらった。
彼女はピアノの講師をやっている本格派。一回のリハでも難なくクリア。
ギリギリのギリギリにサウンドは完成した。
しかし、機材についてもまだ霧の中。
問題はドラムセットだった。日本からドラムを持っていくのは大変なことだ。
大体空輸するだけで20万円はかかってしまうだろう。
さらに現地でどうやって運ぶ?空港までは迎えにきてくれても空港内の搬送には無理がある。
事前申請をすれば対応もできるだろうけれど、今の時期からでは到底間に合わない。
現地サイドにドラムとアンプの手配は頼んだ。
これがないとおしまい。「大丈夫」といわれても少し不安は残った。
手荷物にしても同様だった。経験を生かし極力少なくする。
通常荷物は一人20kgまで。
今回は航空会社に融通を付けてもらってなんとかプラス50kgまでにしてもらった。
前回は100kg超過。あと50kgを削減しなければいけない。
2本持っていったBassは1本に、3本持っていったギターは1本に。
キーボードも簡易スタンドとJV1台にと削った。
それでも演奏には充分な環境であった。重さを量ってなんとか行けそうな感じ。
「帰りのお土産は軽いものを買うように」そこまで徹底した。
しのんもようやく程さんのスケジュールをもらえた。
程さんの厳しいレッスンのおかげでかなり上達の予感。
「今日しか時間ないよ」そう言われて全ての予定をキャンセルしてでのレッスンだったようだが、
かなり修正点を指摘されて帰って来たしのん。
出発まで100時間を切った時点での課題はこなし切れないか?
「ま、行きの飛行機でやれば大丈夫っすよ」なんてすぎやんは言う。
短気は損気、のんきは運気。
直前学習は確かに効果的かもしれないが、今回も綱渡りの中国ツアーとなりそうな予感。
空港には車で向かうことになったすぎやんと潤坊に「前日は呑みすぎないように」と釘をさし
最後の準備の完了。あっ、自分の荷物を全く用意していなかった!
1月の中でも特に冷えたこの頃。天気予報は不吉な雪マーク。
雪は降ってもステージは待ってくれない。飛行機が飛ばなくてもステージは待ってくれない。
遠くかなたのステージではすでにリハに入っているだろう。
明日出会う仲間を想像しつつ就寝。
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