I Wanna be born in china
2002/01/27-2002/02/03 珠海〜上海


10.ROCKROCK!ROCK!

今回のステージは45分を2回。90分のステージとなる。
スタート時間は22:00と23:30深夜なのにお客さんがあるのか、そんな時間まで栄えているのか?
ということが、ここに来るまでの最大の心配であった。
しかしそれも取り越し苦労に終わる。上海の夜は長い、日本と同じように、いやそれ以上にみんな自由に夜を楽しんでいる。
そもそも、そこで日本と違うと思ってしまうこと自体が知識のなさと思ってしまうくらいに「普通であり当たり前」なのだ。
オープニングのBGMが始まりスタッフが呼びに来る。
会場アナウンスで僕らのことを紹介している。歓声が聞こえる。
さあ!いきましょう!上海公演のスタートだ!

今回上海で行うにあたり何点か最終的に解決しない疑問点があった。

「ロックかバラードか」
これは一般に中国ではロックは好まれない定説。人によると上海は若者の町でロックどころかR&BやSOUL
などが流行っているという。でも人によれば中国はまだのりが悪い、特に上海のお客さんは盛り上がらない。とも聞いてきた。
どっちも逆説的である。迷いに迷って、前半にロック系の曲をまとめてみた。

そして、「中国語の曲か日本語の曲か」
中国にきたから中国語という事も考えられるが、よく日本にも外タレがきて日本語の歌を唄ったりしているが
決して発音がうまくない。日本人のわかりにくい中国語かそれともわざわざ日本からのバンドを見に来たのだから
日本語でやってほしいという意見もあると思う。
それでも中国語で曲を作った僕らとしてはポイントに中国語を入れようということになった。

そして、「日本のカバーをやるべきか」
日本でのヒット曲をいれてみるのはどうか?しかし日本のヒット曲自体を知らない人が多い。
そうであればバンドとしてのキャラを引き立たせるためにはバンドのオリジナルがいいのでは?
そんな中から中国の曲のカバーは?ということになり中国の民謡「康定情歌」をかなり大胆にロックアレンジして
カバーすることになった。これでもか、という仰々しいアレンジ。個人的にはかなりGQらしさをダセタアレンジだと思う。
本来メロディーのきれいなこの曲をそのままやるのはあっさりしすぎていると思ったこともあるが、今回の公演に向けて
アレンジをしてみた。以前、評判だった「花心」もギターが入ったことでバランスのよいアレンジとなってきた。

そして最後に「同じ曲をやるべきか」。
これは2ステージあるためで、もし、お客さんが完全入れ替えであるならばバンドとして聞かせたい曲ははずせない。
そうなるとかなりの曲がダブルことになる。しかし、そのまま2ステージみるお客さんも多いことだろう。
そうであれば飽きられてしまう。最後の最後までここは決めきれず結局上海入りしてからの判断となった。
結果、3曲ほどはダブらせてみよう。という事になった。ARKのお客さんはかなり盛り上がっていたし反応もあり嬉しかった。

しかし、ロック系の曲が多すぎたかもしれない。2ステージ目になると空席も見えるようになった。
終了時間が0:30am時間の遅さもあるかもしれないが、少しの悔しさが残った。
もちろん、楽しくできたしお客さんも盛り上がっていた。途中、バンドのプロモート用のカセットテープを配った時には、
お客さんが前に出てきてくれて、盛況感があった。
それでも、まだ残る落ち込み感。即反省会となる。

朱さんからアドバイスが入る「前半はもう少しバラードのほうがイイネ、そこでもっと聞きたいと思ってもらって第二部で
ロックナンバーで盛り上がるほうがいいでしょう」
楽曲については「中国語の曲はとてもいいよ、もっというなら中国語のMCを増やしたほうがイイネ、間の取り方をもっと
よくすればね」。
「MCは日本語でもよい、訳するから」とは言われていたものの、確かに通訳が入るとタイミングも間も取りにくくなる。
スムーズにやるにはやはりMCも全部中国語にしたほうがよかった。
ステージには歌はもちろんだが、間合いやステージングが大切だ。
普段動かない僕らもかなりオーバーアクションを心がけた。それでも、動きが足りないという。
足りなければ補わなければならない。でなければ「もうでなくていい」といわれてしまう。
ステージは学校ではないから教える義務はない。今日の反省が明日活きなければそこで終わりなのだ。
また、「同じ曲はやめたほうがいいね」とも言われた。ほとんどのお客さんは帰らないで2回見ていた。
当初入れ替えもあるといわれていたが、そういうことだ。現場の判断。
極端な話ステージでも変更できなければいけない。
中国式を心得ているメンバーたちはそれに反発することもなく、修正作業に入った。


りんちゃんのアドバイスもあり日本語のカバー「LOVE2000」もやることになった。
マラソンのイメージソングという印象が強いこの曲は人気があるとのこと。
すぐさまメンバーでコードを追う、構成やキメを相談して即席の曲を追加した。
メンバーはリカバリーに長けている。「その曲しらないですよー急に言われても」なんていうものは一人もいない。
喜んでもらいたいからステージに上がる、聞きたいといわれるから喜んで演奏する。
バンドの本質だから僕らは喜んで変更を受け付ける。
そして、日本で試行錯誤の上持ってきた「康定情歌」はとっても良かったと言われた。
「こんなアレンジ初めて聞いた!とってもかっこいいよ」そう言われると嬉しいものだ。
「でも、最後にやるのはもったいない。最後の前にやってアンコールでもう一曲やったほうがいい」そんなアドバイスの元、
明日の選曲は基本的に白紙に戻し新たに考え始める。

4:00am部屋ですぎやんと曲順を考える。
疲れているせいかなかなか決まらない。
そうだ、今日は本当に長い一日だったのだ。
「どうだろうね。すぎやん」
「あれ!起きてたの?さっき寝息立ててたっすよ」。
杉やんはびっくりしていた。
自分では曲順を考えていたつもりがいつの間にか寝ていた。
ARKのステージ

うーん、今日はここまでか。
「すぎやん考えておいて、わるいねー」。


たまには任せて先に眠らさせてもらおう。と思った瞬間、朝になっていた。


2月2日6:30am起床。7:30am朝食をとる。
今日は久しぶりの午前中OFF。
寝ていたい気もしたがせっかくの上海だ、街中を見てもっと自分のものにしたいと思い皆で街に出る。
おいしいショウロンポウ。
歴史的建物と東方電視台など近代的な川向こうを覗かせるワイタンエリアどこもが新鮮だった。
こうしてコンサートを行う地に触れることはとても意味がある。
どんな人が住んでどんな生活をしているか、そこから歌が生まれてくる。
充実したOFFをすごしリハーサルのためにARKへ戻る。早速昨日の変更点を探ってみる。

大げさなメンバー紹介はやめて日本同様リズムを入れての簡単なメンバー紹介にした。
前回の中国ツアーでは一人一人歌を歌ったり芸をしたりというメンバー紹介が受けたが、ここ上海の洗練された
人たちにはすこし「くさく」感じられたようだったので変更としたのだ。
即席のLOVE2000のアレンジも完成。
「そこで、ガツンとしたリフ引いて僕とすぎやんでクイめにはいるからさー」そんなやり取りで十分伝わるメンバーは
信頼が置けるからこそ。過酷なこのツアーでも仲良く、辛い所はお互いに耐えてきた。
メンバーに恵まれていると思った。


そして、リハーサルも終わったころ取材が入った。
昨日のラジオと蘇州テレビについで今日は上海テレビの取材だった。
インタビューとライブの映像を流してくれるらしい。
しのんが中国語で話すとびっくりされた。
「中国に来てコンサートをやるんだからあたりまえでしょう」と僕は思っていた。
でも、実際は「ニーハオ」程度で公演にくるアーチストも多いという。
「そんなんで?」とも思ったが、いいのかな。それは人のこと。関係ない。僕らはそれではいけないと
思っている。僕らは僕らの考え方で相手の国の言葉で伝えよう。そう思っているだけだ。

和やかに取材は進んだ。
この番組は「中日之橋」という番組で日曜の夜にやるかなり有名な番組だという。
上海の人たちに広まってくれればうれしいと思った。オンエアを見れないのが何よりも残念なことである。日本で
中国の放送はほとんど見れないからだ。アメリカの情報はこんなにもあふれているのにね。おかしいと思う。
ま、いいけれど。夕食は川岸のレストランでとった。とても大きい。

中国はなんでも大きい。すごいところだ。店を出ると昼間見た東方電視台が目の前に迫る。
88階のフキヌケを誇るホテルがそびえる。
川向こうのワイタンではライトアップされた建造物がまぶしい。ニューヨークもこんな感じでライトアップされていた。
発展している街の勢いが伝わるのはこういうところだ。
元気がある街。中国上海。今は上海ー北京間の新幹線も工事をしているという。
数年の後にすばらしいことになるぞと。予感。2008年にはオリンピックが開催される。
それまでは飛躍的に進歩を続けるだろう。僕らもその進歩の波に乗ってゆきたいと思う。
夢は2008年オリンピックの公式テーマソング。それを僕らで歌ってしまおう。
夢は幻か。
でもあきらめないであと6年を過ごしたい。奇跡は起きるだろうか?

そしてステージの時間が迫る。
ARKに再び戻る。観客は今日も満員だ日本から来たバンドをどう見るだろうか?
今回の中国ツアーの締めくくり。短かったが総決算となるステージにしてみたい。
もう、メンバーに求めるものは無い。中国最後のステージだ。皆で思いっきり楽しもう。
今までのものを出しきって日本に帰ればいいのだから。

一曲目は翼を広げての中国語版。僕らが最初に作った中国語曲。記念すべき中国へ向かい始めたきっかけの曲だ
この曲からのスタートが今日のステージへの僕らの気持ちのあらあれにもなる。
真っ直ぐに中国を見ていきたい。僕らの思う中国を表現したい。

最初から会場の受けは良かった!「これはいけるかも!」しのんも昨日よりもゆっくりと楽しそうに中国語で会話している。
そうだ、やればできる。
それだけの苦労はしてきたじゃないか。
しのんの中国語は通じるんだ。そうおもっている。今日の元気さがそこに力を上乗せしてくれている。
いつも、もっともっと自分の理想にと思うと自分に厳しくなる。
それは大切な事だしそのおかげで今がある。
自信を持って望めばそれなりの成果があるのだ。なんと言っても費やした時間だ。
結局全てはその努力にあると思う。今日、その成果が出ているのだ。
前半は満足言った内容で終えた。すくなくても昨日よりは
リラックスしていたし、空回りもしていなかったと思う。
そのボルテージは後半のステージにも出せた。
メンバーもうろ覚えの中国語を放つ。
しのんもますます楽しそうだ。
緊張よりも楽しさが上回ったステージ。
「花心」、「康定情歌」は昨日以上に感情を込め演じる事が出来た。
まだまだ、頑張らなければいけないことはたくさんある。
もっともっと時間が欲しい。今回の経験を生かしてもっと完璧にやりたい。


皆盛り上がって!サンヘーローリンガ!(上海はさいこー)


そういう気持ちが湧き上がる。
「ああ、明日もあさってもここでやることができればもっと良くなるのに」そう思えることが次につながると思う。
会場のお客さんからとても大きな花束をもらった。
嬉しい。
中国でもお花をもらえるなんて!りんちゃんもしのんにお花をくれた。
しのんは感動。ぼくらは「しのん、まだ泣くなよ」。まだ、終わってないからね。
久しぶりに汗まみれのステージ。ロックしている。すぎやんのドラムソロも盛り上がる。
勢いのあるいいドラムだ。
潤坊も格別のテクニックとアクションでお客さんを引きつける。
まちゃもソロとなればステージから落ちそうなくらいに前に出て行き、主張のあるギターソロをはじき出す。
久しぶりのロックバンドGYPSYQUEENはあっという間にエンディングを迎える。
そうしてアンコールも盛り上がり、上海でのステージが終わった。
みんなどう思っただろうか?
楽しんでくれただろうか?このあといろいろ感想も聞けるだろう。
さあ、また最初からやり直しだ。
オリンピックと違い、4年も待たずに僕らの舞台は巡ってくるのだろうから。








 
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