
手荷物検査を超えて、エスカレーターを上る時、遠くに怖そうだった石割さんが両手を思いっきり振って立っていた。「再見!」僕らの言葉は気持ちを超えて揺れる。石割さんの手にもったポーチのように大きく揺れていた。これが全てだ。これが今回の公演の象徴とされるべき、フィナーレである。そう思える僕らは幸せだ。 再会したい人がたくさんできた。本当に多くの人の賞賛を手にすることができた。ぼくらはどんな成長をしたのだろう、人はこんなにも短い時間でかわれるものだろうか。たぶん、本質はなにも変わっていないと思う。ただ、ほかの人よりも少しだけ心が中国に傾いているからそれを感じ取ってくれたのかもしれない。 人は変わる、そして人は人をかえる。不安気味の態度も兄のように頼もしい存在に変わり、頼りがいのある発言にかわりうる。それはそう時間の要するものではない。それを知れたことが僕らの最大の成果であるような気がする。 「終わったね〜」心なしか皆さびしそうだ。ここ数日間、機内に乗り込むときは必ず次の公演のことであたまが一杯だった、中国語の勉強、曲の構成、MCの工夫。今日の搭乗にはそれはもう必要ない。そんな寂しさが一層気持ちをブルーにする。「このまま上海についたらライブやっちゃおうか」ほんとうにそうしたい気分だ。8:10。3U573便は重慶を飛び立ち上海に向かう。さよなら重慶、さよならみんな!またくるよ。本当にまたくるよ!いつのときも、公演地を離れる気持ちは悲しく切ない。なんどもおもう「もう一日」と。でもそれもかなわないこと。次の幕開けまで出来ない事。目をつぶると1時間が経過していた。それもそうだ、眠さはピークにたっしている。僕は、時計を日本時間にもどした。 今回は4度目の訪中。メンバーもなれてきた。そして良く頑張ったと思う。きっと僕の要望はがぎりなく厳しいに違いない。無理をいってるな、と思うこともある。でも、このメンバー達はそれをこなす力を持っていると思う。「こうすればねーでもそこまでは無理だよねー」そういう言葉が最も嫌いな僕らだから全員意地になってでもできない事を涼しい顔でこなそうとする。すばらしいメンバーではないか。いくらお金を積んでも買えない人がいる。それが僕にとってGYPSYQUEENのメンバーなのかもしれない。ありがとう。みんな。特に今回のしのんはプリン1年分位のご褒美をあげたい。抽象的な僕のツアレポではすべてを感じてもらえないと思うが、中国での成功は「言葉」以外にありえない。どんなにお金をかけたって、日本でどんなに有名だって国境を超えればそれは何の価値もない。何が価値があるかって?そんなのは簡単さ。相手の価値観を理解すること。 それにはまず「言葉」なんだ。人が生まれて生き、死ぬときまでもしなかったら最も耐えられないものはなんだろう?それは言葉だ。気持ちを伝え気持ちを知り喜びをあたえ悲しみを知る。人と人が最初にコミュニケーションをとる大事なものは言葉以外の何物でもない。その言葉の壁をしのんはこえたのだ。大連のPAのスタッフと、モンゴルの小さな双子の子供と、長春の副市長と、上海でWINGと、重慶で3000人のお客さんと!会話し理解してもらいそして僕らも理解してきてツアーは終わった。そのすべてはしのんの語学であった。僕は中国語は話せない。伝えることができても理解できない。しのんは相手の言葉を理解しようとする。ここは性格の差がモロに出るのだろうけれど、しのんのおかげでこんな素晴らしいツアーができたことに感謝だね。 もうしのんはピンクレディーなんかじゃない。そんな事は忘れて良いよ。吉普賽女郎の歌星、希儂なんだ。おつかれさん。良く頑張った!感動した! 何故か、帰りの移動は時間がたつのが早く感じる。10:10あっという間に、上海虹橋空港へ到着。眠さと寂しさでテンションの低いメンバーも再び上海の天使にであい、元気が出てきた。霧の重慶から晴天の上海へ。今日の上海の空はまさに青天。青く晴れ渡っていた。僕らの帰りのフライトはきっとゆれずに、そんなことを願う僕。バスは虹橋から浦東空港へ向かい、乗り継ぎを行う。この空港間の移動があるため、今日は1日移動で終わってしまうのだ。「重慶はどうでした?」「いやーものすごく良いところだったよ!偶然日本の友人を知っている人がいたりしてねー」何のきなしのバスの会話。そんな感じで1時間ほどで浦東空港に到着した。 いよいよ出国だ。みなれたJALのカウンターについた。13:00無事チェックイン。あとは荷物検査を受け、ゲートをくぐり機内に乗り込むだけだ。うーん、なんだか久しぶりに日本のことを思い出した。ツアー中、あまりにもの慌しさのためかほとんどお土産を買っていないメンバーの為に搭乗まで自由行動にする。「どうしよう、お土産買ってないよー」泣きそうなしのんは結局山ほどのお土産を抱えてきた。気配り派はこういうとき大変だね。さあ、帰るぞ!二日酔い、寝不足、山ほどの手荷物を抱え14:10JALにて日本へ飛び立つ。 いよいよこのツアーの長い飛行機移動もこれで最後だ。延べ、何回だろうか?すべての移動がエアーというのも珍しい旅だった。機内で昨日の公演のVTRを見る。感動だ。演奏とかそう言う事ではなくてお客さんとのコミュニケーションの凄さに改めて感動する。僕らは重慶の若者に受けいれてもらえたんだ。できることならこの学生たちと一緒に酒を飲んでいろいろな会話をしたい。日本についてどうおもっているか、これからどうしていきたいか、夢はなんなのか。気に入らないことがあるか、日本が大好きと思う人もいるんじゃないか。それでは日本に一度きなよ。僕ももっと知りたいんだ中国が。 そんなことを話せる仲間がもっともっと欲しい。僕はそれができると思う。3000人と全員と。とてつもない時間がかかるだろう。でもそれでもいいじゃないか。たとえ一週間ずっと飲みっぱなしでもぼくはこの重慶の人達と会話をしていきたいと思った。音楽をやってそのあとに誰を選ぶとかそう言う事ではなくて「一緒に話をしたい人」と会って会話する機会が欲しい。「日中友好音楽和対話演唱会」そんな企画はどうかなーなどと思いながらビデオを見る。 ああ、また、泣いているやつがいる。機で一人でビデオをみてイヤホンをして涙している女性を発見。この先いつもこんなかんじじゃ、おもいやられるなー。と思っているうちに機は着陸体制に入った。あっという間の3時間。もうすぐ成田に降り立つのだ。 今度はどこへ行くのだろうか?まったくわからないがなぜか再び中国で演奏をしているだろう自分を思い浮かべる。これは予感。根拠のない予感。でも、ぼくらはありあまるほどの中国との関係を作ることができた。成田にタッチダウン。終わった。長く短い13日間。やり遂げられなかったことは次にやろう。GYPSYQUEENは一体どこまで行くのだろうか。そうだ、2008年の北京オリンピックにでるんだ。中国でのオリンピックの開会式に僕らは僕らの中国語曲で中国五輪に敬意を表して望もう。そんなことはできるのか?できるかどうかなんてやらなきゃわかんない。いいから、やってみようぜ。成田からの長い帰り道。夕闇の高速道路で想像する五輪の聖火。 偶然が必然に変わるときはいまかもしれない。第四幕は終わり。劇的な章になったかも、いや、あとあと考えればほんの小さなきっかけにすぎないかもしれない。でも、ここで出会った人たちとの絆は永遠であり何よりも尊い。非常感謝!メンバーの頑張り、スタッフの素晴らしい力。ありがとう!また、第五幕であえれば。きっと会えるとおもう。そんな予感がするんだ。確実な予感が。 GYPSYQUEEN AKI おまけ いかがでしたか、今回のBorder Tour。全行程を終えた僕らの気持ちを少しでも分かってもらうために一つ歌を掲載する事にします。これは僕がツアー中に感じたことを詞にしたもので、メロディーもツアー中の雰囲気を感じながら作ったものです。長春では半分ができ演奏する事ができるようになりました。重慶でしあがったこの曲はまさにツアーのレポートソングです。出会った人、一緒に頑張ったメンバー、そしてこれから一緒に生きていく仲間のためにこの今の自分の気持ちを伝えたいと思います。 あなたに会えてよかった。 Song&Lyric by Aki 為我 ここに来た理由はこの人この街この空よ (大連に辿りついた時に思ったこと。2度目の地。この人たち、この街並み、この青い空に会いたかった。) 為ニー 共に歩いた道は忘れる事があっても誰かが覚えてるだろう (もう僕らの行動は僕らだけのものではない。記憶に残ると言う事は素晴らしいし、その分責任もあることなんだ。) やさしさだけじゃない耐えて走る事が予定にない夢を届けてくれる (運命共同体のバンドだからこそ、本音で付き合う。その結果きっとすばらしい事がおきるんだ。) 異なる言葉を交わす朋友たちよく見れば同じ瞳をしているよ 会えてよかった (モンゴルで強く感じたんだ、だって同じかおをしているんだもん。目の色も同じだったよ。) 為我 はじめて出会う不安をあなたは消してくれました (長春の人たちとの出会いはぼくらの不安を消してくれた。本当に素敵な人達だった。だから初めてだけれどそんな人たちが住む街が大好きな街になったんだ。) 為ニー 懐かしい顔に見えてきたあなたの笑顔が私に力をくれる (重慶で。最初は怖そうな人もだんだん表情が変わってきた。いつしかとても懐かしい朋友のように思えてきたんだ。結果それがステージでのプレイに力をくれた。ツアーのフィナーレの大盛り上がりはあなたのおかげなんです。) あなた一人だけじゃない誰かが待ってる 口にしない約束その手に握りしめて (しのん、苦労は決して一人じゃない、仲間が見守っているんだ。言葉にしないだけだよ。) 異なる大地を歩む朋友たち良く聞けば同じ夢を見ているよ 会えてよかった (上海での事、僕らにはいろいろな仲間がいることに気づいた。そして、みんな同じ夢を持っている。それを話していて感じたんだ。) 異なる時間を過ごす朋友たち良く話せば同じ生き方をしているよ 会えてよかった (時は距離を越えて同じに進む。いろいろな街でいろいろな人に出会ったけれど皆一緒。明日をもっと良く過ごそうと生きてる。そんな大切な仲間を得ることができた事が僕らの幸せ。そして、あなたに会えて本当に良かったと思うんだ。あなたにね) あなたにあえてよかった 2002/09 ロケ地モンゴル、中国 |
| 現地レポート | 公演内容 | 写真集 |